「確認したつもり」が人を轢く——降ろしたはずのお客様との人身事故
運行管理者のカズです。
今回は、これまで書いてこなかった
人身事故の実体験についてお話します。
正直、この話は書くべきか迷いました。
あまりにも現実的で、生々しいからです。
それでも書く理由は一つです。
👉この事故は、誰にでも起こり得るからです。
■起きてしまった事故
夜の出来事でした。
ご高齢のお客様が、手押し車と一緒にタクシーへ乗車。
乗務員は手押し車をトランクへ積み込み、
お客様は後部座席へ。
そのままご自宅付近へ到着し、
支払いも終わり、降車。
お客様はそのまま歩いて帰られました。
ここまでは、
どこにでもある“通常の降車対応”です。

ここまでは、完全に“問題のない流れ”ですね…
しかし、この直後に事故は起きます。
■バック操作の中で起きた違和感
乗務員は車を一度前に出し、
バックしやすい位置を作ろうとしました。
そしてバックを開始します。
その途中で、
車内で何かを落としたのか、
一度停止し、拾い上げる動作を行いました。
そして——
そのままバックを再開します。
■ドライブレコーダーに映っていた現実
後日、私はドライブレコーダーの映像を確認しました。
その瞬間、思わず声が出ました。

え…ちょっと待て…
映像には、
信じられない状況が映っていました。
車内で物を拾っている間に、
後方を歩いていたお客様が転倒していたのです。
しかし——
乗務員は、それに気づいていません。
そのままバック。
違和感を感じて車を降り、
後方を確認した時にはすでに——
お客様は、
出血し意識を失った状態で倒れていました。
■事故の結果
・肋骨5本骨折
・頭部縫合
・折れた骨が肺に刺さる重傷
非常に重大な事故となりました。
ただし、幸いなことに
被害者の方は一命を取り留めました。
現在も治療は続いています。
■なぜこの事故が怖いのか
この事故の本質は、
“見えていなかった”ことではありません。
👉**「見たと思い込んでいた」ことです。**
■人は“確認したつもり”になる
今回の事故は、単なる不注意では説明できません。
・確認したつもり
・見たつもり
・大丈夫だと思った
この3つが重なっています。

“確認した”と感じた時点で、思考が止まってしまうんですね…
人は一度「大丈夫」と判断すると、
それ以上確認しなくなります。
そしてそのまま次の行動へ進む。
👉これが事故の入口です。
■正常性バイアスという落とし穴
さらに、この事故にはもう一つの要素があります。
それが
正常性バイアスです。
人は強いストレスや異常な状況に直面したとき、
👉「大したことはない」
👉「問題ないはずだ」
と、現実を軽く受け止めようとします。
今回の乗務員も同じでした。
事故の説明を、笑いながらしていたのです。
普通に考えれば異常です。
ですがこれは——
👉人間として“正常な反応”です。

だからこそ、怖いんです。
■見えていても、見えていない
今回の事故で最も重要なのはここです。
👉後方に人がいることに気づいていない
👉転倒していることにも気づいていない
つまり
👉視界に入っていても、認識していない
これが
“確認したつもり”の正体です。
■事故のあとに見えた本当の姿
事故後、乗務員は謹慎処分となりました。
そして復帰初日。
営業車に乗り込む姿を見たとき、
私は忘れられない表情を見ました。
とても辛そうな顔でした。

人は、外から見える姿だけでは分からないものですね…
人は、
・強がる
・平気なふりをする
・感情を隠す
そういう生き物です。
■運行管理者として思うこと
当然、この事故の責任は乗務員にあります。
処分も受けています。
ですが私は、
責め続けることはしませんでした。
👉事故を経験した人間だからこそ
👉伝えられることがある
そう思ったからです。
■この事故は特別ではない
今回の事故は、特殊なケースではありません。
・確認したつもり
・見たつもり
・大丈夫だと思った
👉この積み重ねで起きています。
■①とのつながり
実はこの事故、
前回の事故と構造は同じです。
👉「行ける」と思った判断
👉「大丈夫」と思った判断
👉どちらも
“思い込み”が原因です
👉前回の記事はこちら
▶【交通事故ファイル①】信号につかまりたくなかった事故
▼【交通事故ファイル③】▼
■まとめ
事故は突然起きるものではありません。
👉「確認したつもり」
👉「見たつもり」
👉「問題ないだろう」
その一つ一つが積み重なり、
事故になります。
👉人は、見ているつもりで見ていない
これを理解していない限り、
同じ事故は繰り返されます。
■最後に
交通事故の本当の怖さは、
👉その一瞬ではありません。
👉その後に続くすべてです
責任
後悔
人生への影響
だからこそ、
👉「確認したつもり」で終わらせない
それが事故を防ぐために
一番重要なことです。



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