止まっていただけのはずだったその“いつもの習慣”が事故を生んだ【習慣④】

■その違反、無意識になっていませんか?―「止まっているから大丈夫」が事故を生む瞬間

先日、弊社で一件の事故が発生しました。

7歳の女の子が自転車で、停車していた弊社車両に接触するという事故です。

乗務員からの入電は突然でした。

「停車して日報を書いていたら、女の子が自転車ぶつかってきました」

この一報だけを聞けば、多くの人が同じように感じるはずです。

「子どもだから仕方ない部分もあるだろう」

私も、最初はそう思いました。

小学生です。
予測不能な動きをすることもある。

まずは警察を呼び、事故処理を行い、車両は入庫するよう指示しました。

状況だけを聞けば、弊社の過失はかなり低い。
いわゆる10:0に近い事故だろうと。

しかし――

その認識は、ドラレコを見た瞬間に崩れました。

AOI|Assistant
AOI|Assistant

このズレって…すごく怖いですよね。

■事故は「動き」ではなく「状態」で起きている

入庫後にドラレコを確認した瞬間、私は言葉を失いました。

「え?」

画面に映っていたのは、

歩道に乗り上げて停車している自社車両の姿でした。

乗務員は「停車していただけ」と言いました。

しかし事実は違います。

歩道上への駐停車。

これは、免許を持っている人間であれば誰もが理解している基本ルールです。

つまりこの事故は、

「停車していた車に子どもがぶつかった事故」ではありません。

危険な状態を作り出していた場所に、子どもが接触した事故です。

KAZU|運行管理者
KAZU|運行管理者

止まっているかどうかじゃない。どこにいるかだ。

ここで考えるべきは、動いていたかどうかではありません。

その場所が適切だったのか。
危険を生む状態ではなかったのか。

プロドライバーである以上、問われるのはそこです。

■“たった一つの違反”が全てを変える

事故というのは、派手なミスで起きるとは限りません。

むしろ今回のように、

「少しならいいだろう」
「すぐ終わるから大丈夫だろう」

そういった小さな判断の積み重ねが、事故の入口になります。

YUTA|新人ドライバー
YUTA|新人ドライバー

…正直、俺も「ちょっとだけ」って思う時あります。

歩道は歩行者の空間です。

そこに車両を乗り上げるという行為自体が、
すでにリスクを作り出している状態です。

止まっているから安全。

この思い込みが、一番危険です。

■判断は“ルール”だけで決めるものではない

私はすぐに親御さんへ連絡しました。

すると返ってきた言葉は、想像とはまったく違うものでした。

「うちが全部悪いので全額お支払いします」

非常に誠実な対応でした。

しかし私は、その申し出を受けませんでした。

理由はシンプルです。

保険会社を入れれば、事務的に過失割合が決まります。

場合によっては、7歳の子どもがいる家庭に請求が発生する可能性がある。

それが本当に正しい対応なのか。

AOI|Assistant
AOI|Assistant

ルールだけじゃなくて、“人としてどうか”も大事にしたいですね。

私はそこに違和感を持ちました。

■現場で問われるのは“人としての判断”

まず自社工場で見積もりを取りました。

当初は板金込みで5万円ほど。

しかし実際に確認すると、

板金は不要。
塗装のみで対応可能。

修理費用は5,000円でした。

私は乗務員にこう伝えました。

「この費用、自分で負担できるか?」

違反行為は事実です。

仮に保険会社を入れて過失割合が5:5になったとしても、

数千円を子どもの家庭に請求することが、
サービス業として正しいのか。

私はそうは思いませんでした。

乗務員も納得し、全額自己負担となりました。

■“また利用したい”と言われる対応とは何か

私は親御さんへこう伝えました。

「弊社にも落ち度がありました。
金額も高額ではありません。

今回の件は無かったことにさせていただけませんか。

娘さんも警察を呼ばれて怖い思いをされたと思います。
どうかフォローをしてあげてください。」

その時、親御さんから返ってきた言葉は――

YUTA|新人ドライバー
YUTA|新人ドライバー

この流れで、その言葉来るんですか…

「またタクシーを利用させていただきます」

でした。

事故はマイナスです。

しかし、その後の対応次第で、信頼に変わることがあります。

■習慣は「無意識」で出る

今回の事故で一番重要なのは、ここです。

歩道に乗り上げて停車する。

これは一度だけの行動ではありません。

日常の中で繰り返されている“習慣”です。

KAZU|運行管理者
KAZU|運行管理者

習慣はな、気づかんうちに“正しさ”にすり替わる。

だからこそ怖い。

違反は、意識してやるものではなくなります。

「いつものこと」になった瞬間、
判断は止まります。

そして事故は、そういう瞬間に起きます。

■止まっている時こそ、プロの差が出る

事故は動いている時だけではありません。

むしろ、止まっている時の判断の質が、
プロとしての価値を決めます。

・どこに停めるか
・その場所は安全か
・周囲にどんな影響を与えるか

この判断が甘ければ、
どれだけ運転技術が高くても意味がありません。

AOI|Assistant
AOI|Assistant

だからこそ、技術より前に“考え方”なんですね。

■最後に

習慣というのは、気づかないうちに自分の運転を形づくっています。

いつも通りにやっていることほど、
実は深く考えずに続けてしまっているものです。

だからこそ一度だけ、少しだけ立ち止まってみてください。

「この停め方、本当に大丈夫かな」
「この判断、いつの間に当たり前になっていたんだろう」

そんな風に振り返るだけでも、見えるものが変わってきます。

特別なことをする必要はありません。
ほんの少し意識を向けるだけで、運転は変わります。

その小さな変化の積み重ねが、
事故を遠ざけてくれます。

明日から、ひとつだけでいい。
いつもの行動を、少しだけ見直してみてください。

それが、安全への一番やさしい近道です。

YUTA|新人ドライバー
YUTA|新人ドライバー

明日ちょっとだけ意識してみます。

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