■その違反、無意識になっていませんか?―「止まっているから大丈夫」が事故を生む瞬間
先日、弊社で一件の事故が発生しました。
7歳の女の子が自転車で、停車していた弊社車両に接触するという事故です。
乗務員からの入電は突然でした。
「停車して日報を書いていたら、女の子が自転車ぶつかってきました」
この一報だけを聞けば、多くの人が同じように感じるはずです。
「子どもだから仕方ない部分もあるだろう」
私も、最初はそう思いました。
小学生です。
予測不能な動きをすることもある。
まずは警察を呼び、事故処理を行い、車両は入庫するよう指示しました。
状況だけを聞けば、弊社の過失はかなり低い。
いわゆる10:0に近い事故だろうと。
しかし――
その認識は、ドラレコを見た瞬間に崩れました。

このズレって…すごく怖いですよね。
■事故は「動き」ではなく「状態」で起きている
入庫後にドラレコを確認した瞬間、私は言葉を失いました。
「え?」
画面に映っていたのは、
歩道に乗り上げて停車している自社車両の姿でした。
乗務員は「停車していただけ」と言いました。
しかし事実は違います。
歩道上への駐停車。
これは、免許を持っている人間であれば誰もが理解している基本ルールです。
つまりこの事故は、
「停車していた車に子どもがぶつかった事故」ではありません。
危険な状態を作り出していた場所に、子どもが接触した事故です。

止まっているかどうかじゃない。どこにいるかだ。
ここで考えるべきは、動いていたかどうかではありません。
その場所が適切だったのか。
危険を生む状態ではなかったのか。
プロドライバーである以上、問われるのはそこです。
■“たった一つの違反”が全てを変える
事故というのは、派手なミスで起きるとは限りません。
むしろ今回のように、
「少しならいいだろう」
「すぐ終わるから大丈夫だろう」
そういった小さな判断の積み重ねが、事故の入口になります。

…正直、俺も「ちょっとだけ」って思う時あります。
歩道は歩行者の空間です。
そこに車両を乗り上げるという行為自体が、
すでにリスクを作り出している状態です。
止まっているから安全。
この思い込みが、一番危険です。
■判断は“ルール”だけで決めるものではない
私はすぐに親御さんへ連絡しました。
すると返ってきた言葉は、想像とはまったく違うものでした。
「うちが全部悪いので全額お支払いします」
非常に誠実な対応でした。
しかし私は、その申し出を受けませんでした。
理由はシンプルです。
保険会社を入れれば、事務的に過失割合が決まります。
場合によっては、7歳の子どもがいる家庭に請求が発生する可能性がある。
それが本当に正しい対応なのか。

ルールだけじゃなくて、“人としてどうか”も大事にしたいですね。
私はそこに違和感を持ちました。
■現場で問われるのは“人としての判断”
まず自社工場で見積もりを取りました。
当初は板金込みで5万円ほど。
しかし実際に確認すると、
板金は不要。
塗装のみで対応可能。
修理費用は5,000円でした。
私は乗務員にこう伝えました。
「この費用、自分で負担できるか?」
違反行為は事実です。
仮に保険会社を入れて過失割合が5:5になったとしても、
数千円を子どもの家庭に請求することが、
サービス業として正しいのか。
私はそうは思いませんでした。
乗務員も納得し、全額自己負担となりました。
■“また利用したい”と言われる対応とは何か
私は親御さんへこう伝えました。
「弊社にも落ち度がありました。
金額も高額ではありません。
今回の件は無かったことにさせていただけませんか。
娘さんも警察を呼ばれて怖い思いをされたと思います。
どうかフォローをしてあげてください。」
その時、親御さんから返ってきた言葉は――

この流れで、その言葉来るんですか…
「またタクシーを利用させていただきます」
でした。
事故はマイナスです。
しかし、その後の対応次第で、信頼に変わることがあります。
■習慣は「無意識」で出る
今回の事故で一番重要なのは、ここです。
歩道に乗り上げて停車する。
これは一度だけの行動ではありません。
日常の中で繰り返されている“習慣”です。

習慣はな、気づかんうちに“正しさ”にすり替わる。
だからこそ怖い。
違反は、意識してやるものではなくなります。
「いつものこと」になった瞬間、
判断は止まります。
そして事故は、そういう瞬間に起きます。
■止まっている時こそ、プロの差が出る
事故は動いている時だけではありません。
むしろ、止まっている時の判断の質が、
プロとしての価値を決めます。
・どこに停めるか
・その場所は安全か
・周囲にどんな影響を与えるか
この判断が甘ければ、
どれだけ運転技術が高くても意味がありません。

だからこそ、技術より前に“考え方”なんですね。
■最後に
習慣というのは、気づかないうちに自分の運転を形づくっています。
いつも通りにやっていることほど、
実は深く考えずに続けてしまっているものです。
だからこそ一度だけ、少しだけ立ち止まってみてください。
「この停め方、本当に大丈夫かな」
「この判断、いつの間に当たり前になっていたんだろう」
そんな風に振り返るだけでも、見えるものが変わってきます。
特別なことをする必要はありません。
ほんの少し意識を向けるだけで、運転は変わります。
その小さな変化の積み重ねが、
事故を遠ざけてくれます。
明日から、ひとつだけでいい。
いつもの行動を、少しだけ見直してみてください。
それが、安全への一番やさしい近道です。

明日ちょっとだけ意識してみます。



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